親族間でも安心できない?家族信託の契約書作成で必須の条項とは
- 行政書士 涼風

- 1 日前
- 読了時間: 42分
🌹こんにちは!日本契約書センターの代表行政書士 堤です。
本日は契約書作成についての重要なポイントを解説したコラム記事をお届けします。
家族信託は「家族のための財産管理」というイメージがありますが、契約書の作り方次第では親族間で思わぬトラブルに発展することがあります。本コラムでは、家族信託の契約書に必ず盛り込むべき条項や、実務で注意すべきポイントをわかりやすく解説します。初心者の方でも理解できるよう、具体例や専門家の見解を交えて紹介していきます。
本記事のまとめ:
重要事項 | 概要 |
信頼関係だけではなく、具体的な条項設計で財産管理・受益者保護を行うことが不可欠です。 | |
曖昧な条項は相続紛争や税務リスクを招きます。誰が、いつ、どの財産を受け取るかを明示することが重要です。 | |
法律・税務・登記・金融実務が交錯する家族信託は、自己判断だけではリスクが大きいです。契約書作成時には必ず専門家の確認を受けましょう。 |
🌷「家族信託は家族間の信頼だけで大丈夫」と思っていませんか?契約書の設計ミスや条項の抜け漏れが、思わぬ相続トラブルや税務問題につながるケースは少なくありません。本記事では、実務で見られるトラブル事例をもとに、初心者でも理解できる形で必要な条項や注意点を整理しています。将来の安心を守るため、ぜひ最後まで読んでください。
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▼目次
~事例・比較分析~
~番外編~
1.なぜ「家族」でも家族信託は揉めるのか
家族信託=円満、は大きな誤解
「家族信託」と聞くと、「家族間で資産を安心して管理できる」とイメージする方が多いですが、実際には必ずしもそうとは限りません。信頼している家族同士でも、財産や権利の取り扱いに関する考え方が違えば、思わぬトラブルに発展することがあります。
たとえば、父親が所有する不動産を母親が受託者として管理する場合、母親が勝手に売却してしまう可能性や、兄弟姉妹間で分配に不公平感が生まれることもあります。
つまり、「家族だから大丈夫」と安心して契約書を作らないことが最大のリスクなのです。
トラブルの原因は「人」ではなく「契約書の不備」
家族信託で起こるトラブルの多くは、受託者の性格や家族間の関係ではなく、契約書の設計ミスや不十分さに起因しています。
契約書が曖昧だと、例えば以下のような問題が発生します。
誰が何を管理できるのか明確でない
どのタイミングで資産を売却できるか決まっていない
信託終了後の財産分配が曖昧
これにより、家族間で「そんなつもりじゃなかった」という誤解が生じ、揉める原因となります。
実際に多い親族間トラブルの典型パターン
家族信託でよく起きるトラブルは、大きく分けて以下の3つです。
トラブルの種類 | 具体例 |
受託者の暴走 | 受託者が信託財産を無断で売却したり、自己利益のために使う |
不動産が売れない | 契約書に売却条件や承認手続きが明記されておらず、相続前に売却できない |
相続時に兄弟間で紛争化 | 信託終了後の分配ルールが曖昧で、兄弟姉妹間で争いになる |
受託者の暴走
受託者が信託財産を自由に使える場合、信頼していた家族でも「勝手に売却した」「使い込みがあった」と問題になることがあります。
具体例
母親が父親の不動産を売却して親族に無断でお金を使った
兄弟の了承なく信託財産で投資を始めた
このような場合、契約書で受託者の権限と制限を明確にしておくことが非常に重要です。
不動産が売れない
信託財産に不動産が含まれる場合、契約書に「売却できる条件」や「承認者」を明記しておかないと、売却が事実上不可能になることがあります。
例えば、契約書に「受託者は財産を売却できる」とだけ書いてあっても、他の相続人や親族が反対すると、トラブルになりやすくなります。ここで重要なのは、誰が、どの条件で、どのように承認するかを条項に具体化することです。
相続時に兄弟間で紛争化
信託終了後の財産分配は、兄弟姉妹間で最も揉めやすいポイントです。たとえば、父親が亡くなった後に、信託で管理されていた不動産や現金の分配方法が曖昧だと、次のような問題が起きます。
「公平に分ける」と契約書に書かれていたが、具体的な計算方法が不明
兄弟の間で価値評価に差が出て紛争化
このようなトラブルを避けるためには、具体的な分配ルールを契約書に盛り込むことが必須です。
「信頼関係」より「条項設計」が重要な理由
家族信託の成功は、人間関係の良さよりも、条項設計の正確さで決まります。
信頼関係は時間とともに変わることがありますが、契約書で権限・制限・手続きを明文化しておくことで、以下のメリットがあります。
受託者の行動範囲が明確になり暴走を防げる
資産売却や分配の手続きがスムーズになる
将来的な家族間の争いを未然に防げる
このように、家族間であっても家族信託の契約書は「詳細に、具体的に」作ることが重要です。
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2.家族信託契約書が果たす法的役割とは
家族信託契約書は「財産管理の憲法」
家族信託契約書は、単なる書類ではなく、**信託財産の管理・運用のルールを定める「財産管理の憲法」**のような存在です。つまり、受託者がどの財産をどのように管理できるのか、またどのような場合に承認や報告が必要かを明確にするための基本ルールを示すものです。
たとえば、父親が所有する不動産を母親に管理させる場合でも、契約書で
不動産の売却条件
家賃収入の使い道
信託終了後の財産分配
を明示しておくことで、後から「勝手に使った」といった争いを未然に防ぐことができます。
遺言・成年後見との決定的な違い
家族信託は、遺言や成年後見制度とは役割が異なります。
制度 | 主な特徴 | 家族信託との違い |
遺言 | 被相続人の死後に効力発生 | 事前に財産管理はできず、死後の分配のみ |
成年後見 | 判断能力が低下した人を支援 | 家庭裁判所の監督下で管理、自由度が低い |
家族信託 | 財産管理・運用を生前から指定可能 | 受託者が自由に管理でき、細かいルールを契約で設定できる |
ポイントは、家族信託なら生前から柔軟に財産管理ルールを定められることです。逆に言えば、契約書でルールを明確にしないと、遺言や後見と同じくトラブルになる可能性があります。
裁判・銀行・登記実務で見られるポイント
家族信託契約書は、単に家族間の約束ではなく、第三者に対しても効力を示す重要な書面です。
具体例
裁判
相続や財産分配で紛争になった場合、契約書の条項がそのまま裁判の判断材料になります。
銀行
信託口座を開設する際、契約書に基づき「誰が出金・管理できるか」を確認されます。
登記
不動産の名義変更や売却の際、契約書が適切に整備されていないと登記が拒否される場合があります。
つまり、家族信託契約書は家族間のルールを守るだけでなく、実務的な効力を発揮する書面なのです。
契約書が曖昧だと起こる実務上の致命傷
契約書が不十分・曖昧だと、以下のような問題が生じます。
問題 | 具体例 |
銀行取引で拒否される | 信託口座が作れず、家賃収入や振込処理が滞る |
不動産登記で手続きできない | 信託不動産の売却や名義変更が進まない |
裁判で条項解釈の争い | 「どこまで受託者が使えるか」で相続人同士が争う |
例えば、「受託者は必要に応じて財産を売却できる」とだけ書かれていても、「誰の承認が必要か」が書かれていなければ、銀行や裁判所で受託者の権限が認められないケースがあります。
ポイントは、契約書を作る際に「管理・運用・売却・承認」のルールを具体的に条項化することです。これにより、家族間だけでなく第三者との実務上のトラブルも大幅に減らすことができます。
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3.家族信託の契約書作成で必須となる6つの条項【核心】
信託の目的条項
信託の目的条項は、家族信託契約書の根幹にあたる部分です。ここで「何のために信託を作るのか」を明確に定めます。
抽象的だと無効・制限されるリスク
単に「家族のため」とだけ書くと、法律上の効力が限定される可能性があります。例えば、銀行や裁判所は「具体的な目的」が不明確だと、受託者の行動を制限する場合があります。
「認知症対策」だけでは足りない理由
よく「認知症対策のため」とだけ記載されることがありますが、これだけでは不十分です。信託の目的条項は以下のように具体化する必要があります。
財産の管理・運用
生活費・医療費の支払い
賃貸不動産の管理や売却条件
例:単に「父の認知症対策」と書くのではなく、「父の生活費・医療費・不動産管理のため」と明記する。
信託財産の特定条項
信託財産の特定条項では、どの財産を信託に含めるかを明確にします。
金銭・不動産・その他財産の書き分け
現金・預金
不動産(住所・地番を明記)
株式・債券・その他の権利
それぞれを明確に区別して記載することで、トラブルを防ぎます。
財産特定が不十分な場合の実害
信託財産の範囲が曖昧だと、以下のような問題が発生します。
問題 | 具体例 |
銀行手続きで拒否 | 信託口座開設ができない |
財産売却が停滞 | 不動産の名義変更・売却ができない |
相続時の紛争 | 信託財産が誰のものか不明確で兄弟間で争い |
受託者の権限・義務条項
受託者条項では、何ができるか・できないかを明確にします。
できること/できないことを明確にする
財産管理・運用の権限
財産の売却・賃貸の可否
修繕や投資の可否
例:「受託者は不動産を売却できるが、兄弟全員の承認が必要」と明記することで、暴走を防げます。
不動産売却・賃貸・修繕の可否
曖昧な場合、銀行や登記所で認められないことがあります。契約書で権限を条項化することは、実務上も必須です。
受益者・信託関係者の定義条項
受益者条項は、誰が信託財産から利益を受けるかを明確にする部分です。
名義だけ受益者が危険な理由
名義だけを受益者とした場合、財産分配や権利の行使でトラブルになることがあります。例えば、生活費の受け取り権限が不明確だと、受託者との間で争いが発生します。
二次受益者・受益者連続の落とし穴
受益者が亡くなった場合や判断能力を失った場合に備え、二次受益者や連続受益者の定義も条項に盛り込む必要があります。
信託期間・終了事由条項
信託期間・終了事由条項は、信託がいつ終わるかを明確にするための条項です。
「いつ終わるのか」を決めない危険性
信託期間を定めないと、以下のような問題が起きます。
信託財産の管理が永続化して受益者の権利が不明確
死亡・判断能力喪失との関係
信託終了の条件としては、受益者の死亡や判断能力喪失などを明示します。これにより、契約書通りに信託財産を分配できる体制が整います。
信託終了後の財産帰属条項
信託終了後の財産帰属条項は、相続トラブルの9割が発生する場所とも言われています。
相続トラブルの典型例
信託財産の分配方法が曖昧
遺留分(法定相続分の保障)との調整が不十分
遺留分・相続との調整ポイント
遺留分を考慮した分配ルールを明記
信託終了後の不動産や現金の具体的な受取人を指定
複数の受益者がいる場合、分配割合を明確化
例:「父の死亡時に不動産は長男、現金は二男に分配する。ただし、遺留分権利者への支払いを優先する」と明記する。
こうして6つの条項を具体的かつ詳細に設計することが、家族信託契約書で揉めないための最大のポイントです。
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4.条項が1つ欠けただけで起きるリアルトラブル事例
家族信託は条項設計が非常に重要で、たった1つの条項が欠けただけで実務上・法的に大きなトラブルが発生することがあります。ここでは、実際に起きた事例をもとに、典型的な問題を解説します。
信託口口座が開設できないケース
家族信託では、財産の管理用に信託専用口座を作ることがあります。しかし、契約書に受託者の権限や信託財産の範囲が不明確だと、銀行が口座開設を拒否することがあります。
具体例
父名義の預金を母が管理する信託を作ったが、契約書に「どの口座を管理できるか」「誰の承認で入出金できるか」が明示されていなかった
結果、銀行から「受託者権限の確認ができない」として信託口座が作れず、生活費や家賃収入の振込が滞った
この場合、条項を追加して「受託者が信託財産を管理・使用できる」旨を明確にする必要があります。
不動産が売却できないケース
信託財産に不動産を含める場合、売却や名義変更の条件を契約書で定めないと、思わぬ障害が生じます。
具体例
受託者が父の不動産を売却しようとしたが、契約書に売却承認の条件が書かれておらず、兄弟の承認方法も不明
結果、登記所から手続きが拒否され、売却できない状態に
経済的損失が発生し、家族間で不満が表面化
このような事例では、条項を明確化して「売却には誰の承認が必要か」「売却手続きの具体的手順」を契約書に盛り込むことが必須です。
税務上「みなし贈与」と判断されるケース
契約書の内容が不十分だと、税務上、信託財産の移転が贈与とみなされる場合があります。
具体例
受益者が限定されず、財産の管理・使用権が曖昧な契約書
税務署が「信託ではなく、実質的に贈与が行われた」と判断
贈与税が課税され、数百万円単位の追徴税が発生
信託目的や受益者権利を明確にすることで、税務上の「みなし贈与」リスクを回避できます。
親族間で「裏切られた」と感情的対立に発展した事例
条項の欠落は、法律上の問題だけでなく、感情的な対立を生むこともあります。
具体例
信託終了後の財産分配条項が曖昧で、兄弟姉妹間で「不公平だ」と感情的に対立
「こんなはずじゃなかった」と受託者や他の親族を非難
最終的に家庭裁判所での調停に発展し、家族関係が破綻寸前になった
このケースでは、条項を明確にし、分配方法・承認手続き・権利義務を詳細に契約書に盛り込むことで、感情的なトラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ:条項1つの欠落で起こるリスク
欠落条項 | 具体的リスク |
受託者の権限 | 銀行口座が作れない、財産管理が滞る |
財産特定 | 不動産売却や名義変更ができない |
信託目的 | 税務上みなし贈与と判断される |
財産分配条項 | 家族間で感情的対立・裁判に発展 |
ポイントは、家族信託では条項1つの欠落が、実務・法務・税務・家族関係すべてに影響するということです。条項は「漏れなく、具体的に、第三者が理解できる形で書く」ことが、トラブル防止の基本です。
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5.ひな形(テンプレート)利用の危険性
家族信託契約書を作る際、インターネットで見つけたひな形やWordテンプレートをそのまま使う人がいます。しかし、これは非常に危険です。条項1つの違いや記載漏れが、後々大きなトラブルに繋がることがあります。ここでは、そのリスクを具体的に見ていきましょう。
ひな形が「一般論」に過ぎない理由
ひな形は、多くの場合「一般的なケース」を想定して作られています。
家族構成や財産の種類
信託目的や受益者の状況
税務や登記の条件
これらが自分の状況と完全に一致することはほとんどありません。
例:ひな形では「受益者は1名」と書かれていても、兄弟姉妹が複数いる場合は適用できず、分配ルールが曖昧になりトラブルに。
つまり、ひな形は参考にはなるが、丸ごと使うと「自分専用の契約書」にはならないのです。
公正証書にしても安全とは限らない
「公正証書にすれば安全」と考える人もいますが、公正証書化はあくまで形式上の正当性を保証するものに過ぎません。
内容に矛盾や抜けがあっても、公証人は「形式的に問題ない」場合は作成してしまう
後日、受託者の暴走や財産分配の争いが発生することもある
例:不動産売却の承認手続きが曖昧な契約書を公正証書化したが、銀行が承認を要求した際に処理できず、結局家庭裁判所の判断が必要になった。
つまり、公正証書にするだけで安心できるわけではなく、条項の内容そのものの正確さが最重要です。
Wordテンプレートをそのまま使った失敗例
WordやPDFのひな形をそのまま利用すると、以下のような失敗が起こります。
失敗例 | 原因 | 結果 |
銀行口座開設が拒否 | 受託者権限が曖昧 | 信託口座が作れず生活費管理が滞る |
不動産売却不可 | 売却条件が一般論 | 登記所で手続きできず損失発生 |
相続トラブル | 財産分配条項が不明確 | 兄弟姉妹間で家庭裁判所の調停に発展 |
例:ネットで拾った「認知症対策用テンプレート」をそのまま使ったケースでは、信託財産の範囲が抽象的すぎて、銀行が信託口座開設を拒否。結果として、日常の家賃や生活費の管理に支障が出た。
「自己責任条項」が意味する本当のリスク
ひな形には「自己責任で使用してください」といった条項が付いていることがあります。
これは一見無害に見えますが、実務上は重大なリスクを伴います。
ひな形に誤りや不備があっても、作成者は責任を負わない
万一トラブルが起きても、損害や税金は自分や家族が負担する
「公正証書にしたから大丈夫」と考えても、条項不備のリスクは残る
つまり、自己責任条項は「ひな形の不備による損害はすべて利用者が負う」という警告であり、軽視してはいけません。
まとめ:ひな形利用の最大リスク
ひな形は一般論で、自分の状況に完全には合致しない
公正証書化しても条項不備は解消されない
WordやPDFテンプレートをそのまま使うと、実務上のトラブルが発生する
「自己責任条項」がある場合、損害も税務リスクも自分持ちになる
ポイントは、ひな形はあくまで参考にとどめ、必ず自分の家族構成・財産内容・目的に合わせて専門家と条項を作り込むことです。
6.自分で家族信託契約書を作成する場合の限界
家族信託契約書は、自分や家族の財産を守るための重要な書面です。しかし、法律・税務・登記・銀行実務など複数の分野が絡むため、素人判断だけで作るのには限界があります。ここでは、具体的にどのような点で自力作成が危険かを解説します。
法律・税務・登記・金融実務の交差点
家族信託は、単に「家族間の約束」を書けば済む話ではありません。
法律:信託契約として効力を持たせるための条項設計
税務:信託財産の移転が贈与税や相続税に該当しないようにする調整
登記:不動産や株式などの名義変更・登記手続きで必要な記載
金融実務:銀行口座や投資口座で受託者権限を認めてもらうための書面形式
例:不動産信託を自分で作成した場合、契約書では受託者権限が曖昧でも「法律上は効力あり」と思い込むと、銀行で口座開設が拒否され、さらに登記所で名義変更ができない、といった複合的な問題が発生します。
つまり、法律・税務・登記・金融の知識が交差するため、素人判断だけではリスクが高いのです。
素人判断が通用しないポイント
自力で契約書を作ると、次のような盲点が生まれやすくなります。
ポイント | 素人判断で起きやすい失敗 |
受託者権限 | 「財産管理は自由」と書いたつもりでも、銀行や裁判所で認められない |
信託財産の特定 | 預金口座や不動産の詳細が不十分で登記・口座開設不可 |
受益者定義 | 連続受益者や二次受益者が不明確で、相続時に兄弟間で争い |
終了条件 | 信託期間や終了事由が曖昧で、財産分配タイミングが不明確 |
税務調整 | 贈与税や相続税の扱いを誤り、高額課税リスク |
例:契約書に「受託者は生活費を自由に使える」とだけ書いた場合、銀行は「誰の承認で出金するのか」を理由に口座開設を拒否することがあります。
セカンドオピニオンが不可欠な理由
家族信託は一度作ると変更が難しい場合も多く、契約書作成前に専門家の確認を受けることが安全策です。
弁護士や行政書士が法律的に問題ないかチェック
税理士が贈与税・相続税の影響を確認
不動産登記や銀行実務に精通した専門家が実務上の問題を指摘
ポイント:複数の専門家にチェックしてもらうことで、「自分では見落としがちなリスク」を事前に潰すことができ、後々のトラブルを大幅に減らせます。
まとめ:自力作成の限界
家族信託契約書は法律・税務・登記・金融実務が交差する複雑な書面
素人判断だけでは、受託者権限・財産特定・税務調整などで致命的なミスが起きる
作成前に専門家によるセカンドオピニオンを受けることが、トラブル回避の最も確実な方法
ポイントは、家族信託は単なる書類作成ではなく、「財産管理・権利保護・実務運用」を一体で設計する作業だという認識です。
7.専門家に契約書作成を依頼すべき具体的ケース
家族信託契約書は、自分や家族の財産を守るための重要な書面です。条項や設計を誤ると、法律・税務・登記・金融実務のすべてでトラブルが発生する可能性があります。特に以下のケースでは、専門家に依頼することが強く推奨されます。
不動産を含む信託
不動産は信託財産の中でも特にトラブルが発生しやすい資産です。
ポイント
不動産は登記や名義変更が必要
銀行や不動産会社の承認が求められることがある
契約書に売却・賃貸・修繕の条件を明確に定めないと、実務で停止や拒否が起こる
例:親の自宅を信託財産に入れたが、「売却できるかどうか」が曖昧だったため、銀行が信託口座開設を拒否。結果、生活費や管理費の支払いが滞った。
不動産を信託に含める場合は、弁護士・司法書士などの専門家に契約書作成を依頼することが安全策です。
相続人が複数いる場合
相続人が複数いるケースでは、条項設計が不十分だと家族間で争いが発生する可能性が高まります。
ポイント
受益者の定義を明確にする
二次受益者や連続受益者を設計する
分配割合や承認手続きも具体化する
リスク | 具体例 |
分配争い | 財産分配が曖昧で兄弟姉妹間で調停に |
権利行使の混乱 | 誰が何を受け取るか不明確で生活費が支払えない |
複数の相続人が関わる場合、条項の漏れがトラブルに直結するため専門家による設計が不可欠です。
二次相続・受益者連続を設計する場合
受益者が亡くなった後や判断能力を失った場合の財産帰属を設計するには、高度な条項設計が必要です。
ポイント
二次受益者・受益者連続を明確化
信託終了後の財産帰属を詳細に規定
遺留分や相続税への影響を考慮する
例:父→長男→孫という二次受益者を設定した場合、条項に不備があると、孫が財産を受け取れず、結果的に兄弟間で裁判に発展することがあります。
こうした連続設計は、専門家の知識なしでは正確に契約書に反映することが難しいです。
将来売却・融資を予定している場合
信託財産を将来的に売却したり、銀行から融資を受ける予定がある場合も、専門家のチェックが必須です。
ポイント
契約書で売却条件や承認手続きを明確化
銀行や金融機関の実務に即した条項にする
曖昧な条項は融資や売却で拒否されるリスクがある
例:将来、信託財産の不動産を担保に融資を受けようとしたところ、契約書の権限条項が不十分で銀行が融資を拒否。結局契約書の修正に数か月かかり、資金計画が大幅に狂った。
まとめ:専門家に依頼すべき典型ケース
ケース | 理由 |
不動産を含む信託 | 登記や銀行実務での承認が必要なため |
相続人が複数 | 分配や権利行使でトラブルが起きやすい |
二次相続・受益者連続 | 信託終了後の財産帰属を正確に設計する必要 |
将来売却・融資予定 | 条項の不備が金融機関の承認を阻む可能性 |
ポイントは、「自分や家族に合った具体的設計」を反映させることです。ひな形や自己作成では対応できないケースが多く、専門家への依頼がトラブル回避の最短ルートとなります。
8.専門家に依頼した場合の費用と考え方
家族信託契約書の作成を専門家に依頼すると、「費用が高い」と感じる方も少なくありません。しかし、重要なのは単なる金額ではなく、依頼することで回避できるリスクや損失です。ここでは、費用の考え方や専門家ごとの役割分担、重視すべきチェックポイントを解説します。
「高い・安い」ではなく「回避できる損失」
家族信託は、一度作った契約書に不備があると、後々のトラブルで数百万円単位の損失や裁判費用が発生することがあります。
受託者権限が曖昧 → 銀行口座が開設できず生活費や家賃が支払えない
財産分配条項が不明確 → 兄弟間で裁判に発展
税務条項の不備 → 贈与税や相続税で高額課税
例:50万円で専門家に契約書作成を依頼した場合、銀行や税務でのトラブル回避、将来の裁判回避のリスクを大幅に減らせます。つまり、費用は「損失回避への投資」と考えることが重要です。
行政書士・司法書士・弁護士の役割分担
家族信託は複数分野が絡むため、専門家による分担が効率的です。
専門家 | 役割 |
行政書士 | 契約書作成、信託条項の整理、書面のリーガルチェック |
司法書士 | 不動産登記や名義変更の手続き、登記用契約書の作成 |
弁護士 | 複雑な相続関係や二次受益者設定の法的チェック、紛争予防条項の設計 |
例:不動産を含む信託で、登記も必要な場合、契約書作成は行政書士、登記手続きは司法書士、相続人間の複雑な権利関係の確認は弁護士に依頼する、といった分担が効率的です。
複数の専門家が関与することで、契約書の不備や実務トラブルのリスクを最小化できます。
費用より重視すべきチェックポイント
専門家に依頼する際は、単純な費用比較よりも以下のポイントを重視することが大切です。
チェックポイント | 理由 |
契約書条項の正確性 | 銀行・税務・登記で認められる条項か |
自分の家族構成・財産に合致しているか | 一般的なひな形では対応できない |
将来のトラブル防止条項があるか | 二次受益者、受益者連続、分配条件など |
専門家の対応経験 | 家族信託や不動産信託、税務実務の経験があるか |
ポイント:費用は目安に過ぎず、契約書の精度・実務で通用するか・将来トラブルを防げるかが最重要です。
まとめ
家族信託契約書作成費用は「高い・安い」ではなく、回避できる損失への投資として考える
専門家は行政書士・司法書士・弁護士で役割を分けると効率的
費用よりも、契約書の正確性・家族構成への適合・将来トラブル防止条項の有無を重視
家族信託は、一度作った契約書が将来の生活・財産・家族関係に大きな影響を与えます。専門家への依頼は「費用」ではなく「安心の対価」として考えることが重要です。
9.まとめ|家族信託で本当に守るべきもの
家族信託は「家族のための制度」と考えられがちですが、実際には信頼関係だけでは守れない部分が多く、契約書がカギを握ります。ここでは、家族信託で本当に守るべきもの、そして契約書の重要性を改めて整理します。
守るべきは「家族」ではなく「将来の安心」
家族信託を作る目的は、単に「家族に財産を渡すこと」ではありません。
認知症になった親の財産を安全に管理する
将来の相続トラブルを防ぐ
子どもや孫が安心して生活できる環境を守る
例:親子間で信頼関係があっても、「誰がいつどの財産を使うか」が曖昧だと、銀行口座が開設できず生活費が滞るケースがあります。このように、守るべきは感情ではなく、具体的な生活・権利・安心です。
信頼関係を壊さないためにこそ契約書が必要
家族の信頼は大切ですが、信頼だけでは将来のトラブルを防げません。契約書は「信頼の補強材」として機能します。
受託者が暴走した場合でも条項で制限できる
受益者が複数でも分配ルールが明確
財産管理や売却のルールを事前に決めることで、感情的対立を防止
例:兄弟間で財産分配が曖昧だと、「裏切られた」という感情的対立に発展することがあります。しかし契約書に分配ルールが明記されていれば、争いの多くは事前に回避可能です。
つまり、契約書は家族の信頼関係を壊さずに、安心を維持するための保険のような役割を果たします。
家族信託は契約書で9割決まる
家族信託の実務で重要なのは、制度そのものよりも契約書の完成度です。
信託の目的条項、受託者権限、受益者定義、信託期間、財産帰属など、条項が正確で具体的であるほどトラブルが減る
ひな形や自己作成では対応できないケースが多く、専門家の確認が重要
将来の売却・融資・税務・相続トラブルのほとんどは、契約書の内容次第で回避可能
まとめると、家族信託は「契約書の精度」が9割を決める仕組みです。信頼関係だけに頼らず、契約書で将来の安心を確実に守ることが、最も重要なポイントです。
最終ポイント
守るべきは「感情」ではなく「将来の安心」
信頼関係を保つために契約書は必須
家族信託の成功は、契約書の完成度でほぼ決まる
家族信託は単なる書類作成ではなく、「財産・権利・安心を守るための設計図」です。契約書をしっかり作り込むことで、家族が長期的に安心して暮らせる未来を実現できます。
~事例・比較分析~
10.家族信託トラブル事例にみる「契約書の欠落条項」分析
家族信託は、信頼関係だけではなく契約書の設計が極めて重要です。実際の裁判例や実務解説からも、条項の欠落や曖昧さが原因でトラブルが発生するケースが多く報告されています。ここでは、どの条項が欠けるとどのような紛争に発展するかを具体的に分析します。
欠落条項ごとのトラブル発生傾向
裁判例や審判例では、主に以下の条項の欠落が原因で紛争化しています。
欠落条項 | 発生しやすいトラブル | 具体例・原因 |
信託の目的条項 | 信託目的の解釈争い | 「生活費のため」とだけ書かれ、医療費や修繕費の扱いで受託者と受益者間で対立 |
信託財産の特定 | 財産管理・処分の停滞 | 口座番号や不動産の登記情報が不明確で、銀行が信託口座を開設拒否 |
受託者の権限・義務条項 | 受託者の暴走・権限争い | 売却や賃貸の可否が曖昧で、受託者が一方的に処分。受益者が訴訟に |
受益者・信託関係者の定義条項 | 相続人間の紛争 | 二次受益者や連続受益者の扱いが不明で、兄弟間で財産分配争い |
信託期間・終了事由条項 | 終了時期・権利移転の混乱 | 「終了条件なし」と記載され、財産分配タイミングが不明確になった |
信託終了後の財産帰属条項 | 相続・贈与トラブル | 遺留分調整や二次相続が考慮されず、裁判で分割や贈与税課税の争いに |
欠落条項別の具体的な事例
1. 信託の目的条項の不備
事例:高齢の父が認知症になる前に信託を設定したが、「生活費のため」とだけ記載。
トラブル:医療費や施設費が対象かどうかで受託者と受益者が対立。裁判所で解釈が争われた。
2. 信託財産の特定条項の不備
事例:預金口座のみを記載し、不動産を含め忘れた。
トラブル:受託者が不動産の売却を試みたが、銀行・登記所が承認せず、売却や融資が停止。
3. 受託者の権限・義務条項の不備
事例:売却・賃貸の権限が明確でなかったため、受託者が勝手にマンションを売却。
トラブル:受益者が訴訟提起、裁判で契約条項解釈が争点となった。
4. 受益者・信託関係者の定義条項の不備
事例:二次受益者や連続受益者の記載がなく、長男の死亡後の財産帰属が不明確。
トラブル:兄弟間で遺産分割紛争に発展。
5. 信託期間・終了事由条項の不備
事例:終了条件を明記せずに契約。
トラブル:受益者が死亡しても信託が続き、財産帰属時期が不明瞭になった。
6. 信託終了後の財産帰属条項の不備
事例:遺留分や税務処理を考慮せずに記載。
トラブル:相続人の一部が遺留分請求、税務署から課税指摘、裁判や修正手続きに発展。
分析まとめ
家族信託の紛争の多くは契約書の欠落条項に起因する
特に「受託者の権限」「財産の特定」「終了後の財産帰属」の不備は紛争化リスクが高い
裁判例・審判例・実務解説からも、条項を具体的・明確に設計することがトラブル防止の最大ポイントとされています
結論:家族信託の成功は、契約書の完成度に大きく依存します。欠落条項を事前に潰し、専門家に確認することが最も効率的なトラブル予防策です。
11.金融機関・登記実務で「通らなかった家族信託契約書」の共通点
家族信託契約書は、裁判や税務だけでなく、銀行口座の開設や不動産登記などの実務面でも正しく作られていないとトラブルになります。ここでは、実務上「通らなかった」事例と、その原因となった条項の共通点を整理します。
信託口口座が開設できなかったケース
銀行で信託口座を開設する際、以下のような問題で契約書が受理されないことがあります。
受託者の権限が曖昧例:契約書に「財産管理」とだけ書かれ、預金引き出しや振込が可能か明記されていない→ 銀行は法的に安全に取引できないと判断して口座開設を拒否
信託財産の特定が不十分例:口座番号や不動産情報が未記載→ 「何を管理するための口座か」が不明確で、金融機関の内部規程でNG
受益者や二次受益者の記載が不明確→ 銀行は誰が最終的な権利者か判断できず、審査に通らない
ポイント:金融機関は契約書の条項を、**「これで安心して入出金できるか」**という観点でチェックします。条項が抽象的だとまず通りません。
不動産信託登記で補正・却下されたケース
不動産を信託財産に含める場合、登記所でも契約書の不備で補正や却下が発生します。
信託の目的条項が抽象的すぎる例:「財産の有効活用のため」とだけ記載→ 登記所は「誰がどの範囲で権限を持つのか」が明確でないとして補正要求
受託者の権限が曖昧例:売却や賃貸の可否が不明→ 権限範囲が不明なため登記が進まない
信託財産の特定不足例:登記簿の所在や地番が不明→ 補正通知が入り、修正後再提出が必要
補足:登記所は契約書を法律上の「登記できる権利移転の根拠」として審査します。曖昧な記載では登記が止まってしまいます。
実務解説・専門家コラムからNG条項を抽出
専門家が指摘する「銀行・登記でNGになる契約書の特徴」は以下の通りです。
NG条項 | 説明 |
抽象的な信託目的 | 「生活のため」とだけで、医療費や修繕費の扱いが明記されていない |
受託者権限の曖昧さ | 売却・賃貸・修繕・預金引き出しなど、できること/できないことが不明 |
財産特定の不備 | 口座番号・不動産情報・株式などが明記されていない |
受益者定義の不十分 | 二次受益者・受益者連続が明確でない |
終了・帰属条項の欠落 | 信託終了条件や終了後の財産帰属が明記されていない |
専門家のコラムでも、「条項が抽象的だと銀行口座も登記も通らない」と指摘されています。実務では裁判以上に明確さが求められるのが特徴です。
まとめ
金融機関や登記所は、契約書の抽象的な条項や曖昧な権限表記を嫌う
信託財産の特定、受託者権限、受益者定義、終了後の財産帰属が不十分だと口座開設や登記が通らない
実務上「通る契約書」を作るためには、具体的・明確・全項目網羅型の契約書設計が必須
結論:裁判では許される曖昧な条項でも、銀行・登記ではNG。家族信託契約書は、実務を意識して作ることが重要です。
12.テンプレート型家族信託契約書とオーダーメイド契約書の条項比較
家族信託契約書には、市販のテンプレートやWebで公開されているひな形を使う方法と、専門家に依頼してオーダーメイドで作成する方法があります。しかし、どちらも同じ効果があるわけではなく、条項の網羅性や具体性に大きな差があります。ここでは、実務で必要な主要条項と、テンプレート契約書の不足点を整理します。
市販・Web公開されているひな形契約書の特徴
一般論ベースの条項が多い
「財産管理」「受託者権限」「受益者」などの基本的な枠組みは含まれる
個別事情(不動産の種類・複数受益者・二次相続・金融機関対応など)に対応できない
例:テンプレートでは「受託者は財産を管理する」とだけ記載されていることが多く、売却や賃貸の可否、銀行口座開設の具体条件までは明記されていないことがほとんどです。
オーダーメイド契約書の特徴
個別事情に応じて条項を具体化
銀行・登記・税務・相続実務の観点を反映
不動産・現金・株式など財産種類ごとに特定
受益者や二次受益者、信託終了後の財産帰属を明確化
例:オーダーメイドでは「受託者は〇〇不動産を売却する際、〇〇銀行の承認を得ること」と具体的に記載され、金融機関審査や登記実務でも問題が起きにくい設計になっています。
条項比較表
条項 | テンプレート型 | オーダーメイド型 | コメント |
信託の目的 | 一般論(生活費・医療費) | 生活費・医療費・修繕費・教育費など個別指定 | テンプレートは抽象的で解釈争いが起きやすい |
信託財産の特定 | 「預金・不動産等」 | 口座番号、不動産登記簿情報、株式番号まで特定 | 実務では特定情報が必須 |
受託者の権限・義務 | 財産管理のみ | 管理・売却・賃貸・修繕・銀行取引の可否を明記 | 権限曖昧は口座開設・登記NGの原因 |
受益者・信託関係者 | 受益者名のみ | 二次受益者・連続受益者・特定条件付き受益者まで明記 | 曖昧だと相続争いに発展 |
信託期間・終了事由 | なしor簡単な記載 | 条件・期間・死亡・認知症など具体的に記載 | 終了時の混乱防止に必須 |
信託終了後の財産帰属 | 簡単に「相続人へ」 | 遺留分・二次相続・税務調整まで反映 | トラブル防止の最大ポイント |
分析まとめ
テンプレート型契約書は、一般的なイメージをつかむには便利ですが、実務上必要な条項が抜けていたり、抽象的すぎたりすることが多い
オーダーメイド契約書は、金融機関・登記所・税務・相続実務すべてを意識して作成できるため、トラブルリスクを大幅に減らせる
特に金融機関口座開設や不動産信託登記をスムーズにするには、オーダーメイドで具体的条項を盛り込むことが重要
結論:テンプレート型は「参考用」、実務対応・安心確保のためにはオーダーメイド契約書が不可欠です。
13.家族信託における「受託者権限条項」の書き方による実務差
家族信託で最も重要な条項のひとつが受託者の権限を定める条項です。ここが曖昧だと、金融機関や登記所、不動産管理の現場でトラブルが発生します。受託者の「できること」「できないこと」を明確に記載することが、信託実務の安全性を左右します。
不動産売却・賃貸・修繕・借入の可否の具体例
受託者権限条項の書き方で、同じ信託財産でも実務対応が大きく変わります。
権限条項の書き方 | 実務での影響 | 具体例 |
曖昧:「受託者は財産を管理する」 | 銀行口座開設・不動産登記・売却時に停止 | 登記所が「売却権限不明」と補正要求、金融機関は振込・借入を拒否 |
明確:「受託者は売却・賃貸・修繕・借入を行うことができる」 | 実務上スムーズに対応可能 | マンション売却や賃貸契約、修繕費用の支払いが問題なく実行 |
条件付き:「売却は〇〇の承認を得た場合に限る」 | 条件遵守で安全だが、承認手続きに時間がかかる | 受益者全員の同意が必要な場合、売却前に承認取得が必須 |
ポイント:曖昧な表現は実務停止の最大要因。一方、条件付き条項は安全性が高いものの、手続きの手間が増える点に注意が必要です。
権限不足で実務停止した事例
不動産売却が止まったケース
受託者がマンションを売却しようとしたが、契約書には「財産管理」としか記載されておらず売却権限が不明
登記所が補正通知を発出、売却手続きが数か月停止
銀行口座の振込・借入が不可になったケース
契約書に「受託者は財産を管理する」としか書かれておらず、銀行が振込・借入権限を確認できず
結果、受託者は資金管理ができず、信託目的(生活費支払や修繕費支払)が滞る
修繕費支払いで受益者と紛争化
受託者が修繕費を支払おうとしたところ、契約書に明記がなく受益者が反発
弁護士介入で契約解釈を巡る紛争に発展
分析:受託者権限条項が曖昧だと、信託の実務は停止し、最終的には裁判や調停に発展するケースが多い。逆に具体的かつ条件付きで明記しておくと、金融機関・登記所・受益者とのトラブルを未然に防げます。
まとめ
家族信託での受託者権限条項は、不動産売却・賃貸・修繕・借入の可否を明確に記載することが重要
曖昧な条項は、銀行口座開設や登記申請の停止、受益者との紛争の原因になる
条件付きで権限を明記することで、実務安全性を保ちつつ、必要な承認手続きも管理できる
結論:受託者権限条項の精密な設計が、家族信託の実務成功の鍵です。
14.信託終了・帰属条項の違いによる「相続トラブル化」リスク分析
家族信託では、信託期間終了後や受益者死亡時に信託財産が誰に帰属するかを定める「信託終了・帰属条項」が非常に重要です。この条項が不明確だと、相続紛争に発展するリスクが高まります。ここでは、条項の違いと実務リスクを整理します。
信託終了時の財産帰属指定方法とトラブル事例
信託終了時の財産帰属の指定方法は主に3種類あり、それぞれ実務上の注意点があります。
指定方法 | 特徴 | トラブル事例 |
1. 「特定の受益者へ帰属」 | 信託終了後に、明確に誰が受け取るかを指定 | 兄弟の一部が納得せず、遺留分侵害として裁判沙汰に |
2. 「相続人に帰属」 | 民法上の法定相続に従う | 受益者が複数いる場合、遺産分割協議で紛争化 |
3. 「条件付き帰属」 | 二次受益者や特定の条件で受益者を決定 | 条件解釈で家族間で意見が分かれ、調停に発展 |
ポイント:帰属先を具体的に記載するほど、相続紛争は回避しやすいが、逆に抽象的・条件曖昧だと家族間のトラブルが発生します。
遺留分・特別受益との衝突ポイント
信託終了・帰属条項で注意すべき最大のポイントは遺留分や特別受益との調整です。
遺留分法定相続人には、最低限相続できる権利(遺留分)があり、これを侵害すると訴訟リスクが発生します。
例:信託で長男に全財産を帰属させると、次男・三男が遺留分減殺請求を行う可能性
特別受益生前贈与や信託以外の利益供与がある場合、信託財産の帰属指定と衝突することがあります。
例:次男に生前贈与があった場合、信託終了後に帰属条項が長男に全額指定されると不公平感が生じ、紛争化
補足:専門家は、信託終了条項を作成する際、遺留分や特別受益を考慮して帰属先を調整した条項を作成することが推奨されています。
実務上のリスクまとめ
信託終了条項が抽象的だと、相続人間で解釈争いが発生
遺留分や特別受益との調整が不十分だと、裁判・調停リスクが高まる
条件付き帰属は安全性を高めるが、条件解釈で家族間トラブルの可能性が残る
まとめ
信託終了・帰属条項は、誰が財産を受け取るかを明確にする条項
遺留分・特別受益との整合性を考慮し、具体的に記載することが相続トラブル防止の鍵
家族信託は契約書で9割決まると言われる通り、終了条項の設計こそ、将来の安心につながる
結論:家族信託契約書の終了・帰属条項は、条文の書き方次第で相続紛争のリスクを大きく変える重要な要素です。
15.税務上「問題視された家族信託契約書条項」の整理
家族信託を設計する際、契約書の条項次第で税務上のリスクが生じることがあります。特に、みなし贈与・損益通算不可・所得帰属の誤りは、信託契約の形態によって課税関係が大きく変わるため注意が必要です。ここでは、実務で問題になった条項を整理します。
みなし贈与に該当するリスク条項
信託契約書に以下のような条項があると、税務上「みなし贈与」と判断されることがあります。
条項例 | リスクの内容 | 具体例 |
信託財産を受益者に無条件で帰属させる条項 | 財産の無償移転と見なされ、贈与税課税 | 高齢の親が子供を受益者として不動産全額信託した場合、子供への贈与と判断され課税対象に |
受託者の裁量権が過剰で受益者が実質的に自由に引き出せる条項 | 贈与税や所得税上、受益者帰属と認定される | 信託契約で「生活費・教育費は受益者の自由裁量で支払える」と明記され、受益者が自由に資金を取得できる状態 |
補足:税務上は、受託者が裁量を持ちすぎると、形式上の信託でも実質は贈与とみなされることがあります。
損益通算不可・所得帰属誤りリスク
信託財産から生じる収益の所得帰属が曖昧な場合、損益通算や所得計算に誤りが生じ、税務上問題になることがあります。
条項例 | リスク内容 | 実務影響 |
信託財産の収益(賃料や配当)の受益者帰属を明記していない | 誰の所得か不明確になり、税務署から修正要求 | 家賃収入の申告で課税者が異なるとして追加課税の可能性 |
受益者に損益通算可能と誤解させる表現 | 信託財産の損失を他の所得と通算できない場合、誤った申告になる | 税務調査で損失計上が否認され、追徴課税のリスク |
ポイント:信託契約書には、収益や損失の帰属を明確に定めることが不可欠です。曖昧にすると、信託の形態によっては受益者課税ではなく贈与課税や法人課税とみなされることがあります。
税理士・国税OBの指摘例
国税OB解説
「信託契約書の内容が曖昧であれば、税務署は形式より実質で判断する。受益者の自由度が高すぎる条項は要注意」と指摘。
税理士見解
「信託契約書には収益帰属・権限範囲・信託終了時の帰属を具体的に記載すべき。そうでないと、みなし贈与や所得誤認のリスクが高まる」と解説。
実務上の注意点まとめ
信託契約書の受益者帰属条項や裁量権条項は、税務上問題になる可能性が高い
曖昧な権限や収益帰属は、みなし贈与・損益通算不可・所得帰属誤りの原因になる
専門家(税理士・信託実務経験者)によるチェックが必須
結論:家族信託契約書は、法律的な安全性だけでなく税務上の適正性も考慮して設計することが重要です。条項一つで、贈与税・所得税・相続税の課税リスクが大きく変わります。
~事例・比較分析~
契約書作成は弁護士か行政書士のどちらを頼ればいいか?
契約書を作成しようとしたとき、「弁護士に頼むべき?それとも行政書士で足りる?」と迷う方はとても多いです。結論から言うと、契約書を作る目的と、今の状況によって選ぶべき専門家は変わります。
この記事では、契約書に詳しくない初心者の方でも判断できるように、弁護士と行政書士の違いを分かりやすく解説します。
そもそも契約書作成を専門家に依頼する必要はあるのか
インターネット上には、無料で使える契約書のテンプレート(ひな形)が数多くあります。しかし、それをそのまま使うことには大きなリスクがあります。
テンプレート契約書のよくある落とし穴
テンプレートは「一般的な取引」を想定して作られているため、実際の取引内容と合っていないことがよくあります。
たとえば、・自分に不利な条文が入っていることに気づかない・業種特有のリスクが考慮されていない・法改正が反映されておらず、古い内容のまま
これは、既製品のスーツをサイズ調整せずに着るようなものです。見た目は問題なくても、いざトラブルが起きると「使えない契約書」になってしまいます。
弁護士に契約書作成を依頼する場合
弁護士は、法律トラブル全般を扱う国家資格者で、紛争(もめごと)を解決するプロです。
弁護士の強み
弁護士に依頼する主なメリットは次のとおりです。
・裁判や交渉を前提とした高度な契約書を作成できる・すでにトラブルが起きている案件にも対応できる・相手方との交渉や裁判の代理人になれる
「すでに相手と揉めている」「裁判になる可能性が高い」という場合は、弁護士への依頼が適しています。
弁護士に依頼する際の注意点
一方で、弁護士に契約書作成を依頼すると、費用が高額になりやすいというデメリットがあります。契約書1通で数十万円かかることも珍しくありません。
日常的な業務委託契約や秘密保持契約などでは、費用に対して内容が過剰になるケースもあります。
行政書士に契約書作成を依頼する場合
行政書士は、契約書や法律文書の作成を専門とする国家資格者です。特に「トラブルを未然に防ぐ」ための契約書作成を得意としています。
行政書士の強み
行政書士に依頼するメリットは次のとおりです。
・契約書作成の実務に特化している・将来のトラブルを防ぐ視点で条文を作成できる・弁護士に比べて費用を抑えやすい
これから契約を結ぶ段階であれば、行政書士で十分対応できるケースが多いです。
行政書士が対応できないこと
行政書士は、裁判や交渉の代理人になることはできません。そのため、すでに訴訟になっている場合や、相手と直接争う必要がある場合は弁護士に依頼する必要があります。
弁護士と行政書士の違いを比較表で整理
比較項目 | 弁護士 | 行政書士 |
契約書作成 | 可能 | 可能 |
裁判・交渉代理 | 可能 | 不可 |
トラブル予防への適性 | △ | ◎ |
費用感 | 高額になりやすい | 比較的安価 |
日常的な契約書 | やや過剰 | 最適 |
結局どちらを選ぶべきかの判断基準
迷ったときは、「今、何を求めているのか」で判断するのがポイントです。
行政書士がおすすめなケース
・これから契約を結ぶ段階・トラブルを未然に防ぎたい・費用を抑えて契約書を作成したい・業務委託契約、売買契約、秘密保持契約など一般的な契約
弁護士がおすすめなケース
・すでにトラブルが発生している・裁判や交渉を前提としている・契約金額が大きく、リスクが極めて高い
契約書作成は目的に合った専門家選びが重要
契約書作成で一番大切なのは、「弁護士か行政書士か」ではなく、その契約書で何を守りたいのかを明確にすることです。
トラブル予防が目的であれば、行政書士による契約書作成は、費用面・実務面ともに非常に合理的な選択です。
日本契約書センターでは、初心者の方にも分かりやすく、実務に即した契約書作成をサポートしています。どの専門家に依頼すべきか迷っている方は、まずは気軽に相談してみてください。
また、日本契約書センターでは、あらゆる契約書を一律2万円で作成しています。
作成依頼は公式LINEから簡単に完結。
専門知識がない方でも、やり取りを進めながらスムーズに契約書を作成できるため、誰でも“簡単”にご利用いただけます。
一般的に、弁護士や司法書士に契約書作成を依頼すると、費用が高額になりがちです。
一方で、日本契約書センターは行政書士が運用し、オンライン・電話・メールを活用することで、簡単・格安・スピーディーな対応を実現。最短での納品にも対応しています。
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